- 「遺言書を書きたいけど書き方がわからない…」
- 「自分で書いて無効にならないか不安…」
上記のようなお悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
遺言書は自分で作成することも可能ですが、厳格な要件を満たしていないと、遺言書としての効力がなくなるリスクがあります。
この記事では、遺言書の書き方や自分で作成する時の注意点を詳しく解説していきます。
実際の文例も用意しておりますので、遺言書の作成を検討している方は是非参考にしてみてください。
遺言書を書き方を始める前に整理すべきこと
遺言書は、単に財産を分けるための書類ではありません。
自分の死後、誰に何を引き継いでほしいのか、残された家族の負担や争いをどう減らしたいのかを、法的な形にするための手段です。
そのため、いきなり本文を書き始めるのではなく、まずは自分の中で財産・相続人・家族関係・希望する分け方を整理しましょう。
特に、不動産・複数の預貯金・株式・借入金・前婚の子・内縁の配偶者などがある場合は、事実関係を丁寧に確認することが重要です。
整理不足のまま作成してしまうと、遺言書があっても名義変更が進まなかったり、相続人同士で争いになるケースもあります。
自分の意思を明確に反映させるために、まずはご自身の状況を整理してみましょう。
遺言書が必要な人・一般的に作成を検討したいケース
遺言書は、死後自分の意思を反映させるために必要な書類です。
法律上の相続分どおりではなく、自分の意思で分け方を決めたい場合、遺言書を作る意味があります。
特に以下のようなケースでは、遺言書を作成した方がよいでしょう。
| 遺言書を検討したいケース | 理由 |
|---|---|
| 子どもがいない夫婦 | 配偶者だけでなく、亡くなった人の父母や兄弟姉妹などが相続人になる場合があります。配偶者に財産を残したい場合は遺言書の作成を検討しましょう。 |
| 相続人が多い場合 | 相続人が多くなるほど、遺産分割協議で意見をまとめることが難しくなる可能性があります。あらかじめ財産の分け方を決めておくことで、相続手続きを進めやすくなります。 |
| 相続人同士の関係が良くない場合 | 遺産の分け方をめぐってトラブルになる可能性がある場合は、遺言者自身の意思を遺言書に残しておくことが重要です。 |
| 特定の相続人に多く財産を残したい場合 | 長年介護をしてくれた子どもなど、特定の相続人に多く財産を残したい場合は、遺言書で財産の分け方を指定することができます。 |
| 相続人以外の人に財産を残したい場合 | 内縁の配偶者やお世話になった人など、法律上の相続人ではない人には、原則として相続権がありません。財産を残したい場合には遺言による遺贈を検討します。 |
| 前の配偶者との間に子どもがいる場合 | 前の配偶者との子どもも相続人となるため、現在の配偶者やその子どもとの間で遺産分割協議が必要になる場合があります。 |
| 不動産など分けにくい財産が多い場合 | 自宅や土地などは預貯金のように簡単に分けることができません。「誰がどの不動産を取得するか」をあらかじめ指定しておくことができます。 |
| 事業を経営している場合 | 自社株式や事業用財産などが複数の相続人に分散すると、事業承継に影響する可能性があります。後継者に財産を承継させるための対策が重要です。 |
| 障がいのある家族など将来が心配な人がいる場合 | 自分の死後も生活を支えていきたい家族がいる場合、財産をどのように残すかを事前に検討しておくことが大切です。 |
| 相続手続きの負担を減らしたい場合 | 遺言書によって財産の承継先を明確にしておくことで、遺産分割協議が不要になる財産もあり、残された家族の負担軽減につながります。 |
遺言書の種類と効力を比較|自筆・公正証書・秘密証書遺言の選び方
この記事では、自分で書く場合(自筆証書)の注意点を詳しく解説していきますが、遺言書には3種類の方式が存在します。
最も利用されるのは、今回解説する自筆証書遺言と、公証人が作成に関与する公正証書遺言です。
どの方式を選ぶかは、費用を抑えたいか、形式不備を避けたいか、内容を秘密にしたいか、その他身体状況や財産の複雑さによって変わります。
3種類の特徴やメリット・デメリットは下記のとおりです。
| 種類 | 特徴 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|---|
| 自筆証書遺言 | 遺言者本人が作成する遺言書です。原則として、本文・日付・氏名を自書し、押印して作成します。 |
・自分で作成できる ・費用を抑えられる ・比較的手軽に作成できる |
・形式を誤ると無効になる可能性がある ・紛失や改ざんのおそれがある ・法務局で保管しない場合は、原則として家庭裁判所での検認が必要 |
| 公正証書遺言 | 遺言者が公証人に遺言内容を伝え、公証人が公正証書として作成する遺言書です。原則として証人2人以上の立会いが必要です。 |
・形式不備による無効のリスクが低い ・原本が公証役場で保管される ・家庭裁判所での検認が不要 |
・作成に費用がかかる ・証人2人以上の立会いが必要 ・公証役場との打ち合わせなど一定の手間がかかる |
| 秘密証書遺言 | 遺言の内容を秘密にしたまま、その遺言書が本人のものであることを公証人と証人に証明してもらう方式です。 |
・遺言の内容を秘密にできる ・自筆でなくても作成できる |
・内容の不備までは公証人が確認しないため、無効になる可能性がある ・証人2人以上が必要 ・原則として家庭裁判所での検認が必要 |
①自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が自分で作成する方式です。
自分で作成するため費用を抑えやすく、他の方式に比べて手軽に作成できるというメリットがあります。
また、遺言書の内容を秘密にできるというのもメリットの1つと言えるでしょう。
一方で、自筆証書遺言には紛失や改ざんのリスクが伴い、要件を満たしていないと無効になってしまう恐れがあります。
2019年1月13日以降は、財産目録に限ってパソコン作成や通帳・登記事項証明書のコピー添付が認められていますが、各ページへの署名・押印も必要です。
自筆証書遺言の保管方法に関しては後述しますが、作成しただけで誰にも伝えず、後になって出てきたということも少なくないため、保管方法に関しても注意が必要です。
②公正証書遺言
公正証書遺言は、遺言者が公証人に遺言内容を伝え、公証人が法律上の方式に従って遺言書を作成する方式です。
作成時には原則として証人2人の立会いが必要で、遺言者が内容を確認して署名・押印します。
原本は公証役場で保管されるため、紛失や改ざんのリスクを抑えられ、家庭裁判所の検認が不要である点が最大のメリットといえるでしょう。
費用は財産を受け取る人ごとの財産額などを基準に算定され、証人を専門家へ依頼する場合には別途費用がかかることがあります。
高齢で手書きが難しい人、財産や家族関係が複雑な人、確実に手続きを進めたい人に向く方式です。
③秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言の内容自体は公証人や証人に示さず、遺言書の存在を公証人と証人2人に証明してもらう方式です。
本文は自書でなくてもよく、パソコンや代筆を利用できる点が自筆証書遺言との違いです。
しかし、公証人は内容の確認をしないため、内容が曖昧であったり、財産の表示が不十分であったりするリスクがあります。
また、作成に公証人と証人が必要である一方、公正証書遺言のように原本が公証役場に保管されるわけではありません。
実務上は自筆証書遺言または公正証書遺言が選ばれることが多く、秘密証書遺言が採用されることは少ないです。
内容を絶対に秘密にしたいといった強い希望がない限り、選ぶ必要がない方式といってよいでしょう。
自筆証書遺言の書き方|有効にするための要件とは?
自筆証書遺言には、守らなければいけないルールが多数存在します。
これらが守られていない遺言は無効となってしまうため、注意が必要です。
以下からは、実際のひな形をもとに自筆証書遺言の書き方を解説していきます。
第1条 遺言者○○ ○○は、遺言者が所有する下記の不動産を、妻○○ ○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。
所在 ○○県○○市○○町○丁目
地番 ○番○
地目 宅地
地積 ○○.○○平方メートル
所在 ○○県○○市○○町○丁目○番地○
家屋番号 ○番○
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 ○○.○○平方メートル
2階 ○○.○○平方メートル
第2条 遺言者は、下記の預貯金を、長男○○ ○○(平成○年○月○日生)に相続させる。
普通預金 口座番号○○○○○○○
第3条 遺言者は、第1条および第2条に記載した財産を除く、遺言者が有する一切の財産を、妻○○ ○○に相続させる。
第4条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、長男○○ ○○を指定する。
【付言】
家族のみんなへ。
これまで長い間、私を支えてくれて本当にありがとう。
この遺言書は、私が亡くなった後に、家族のみんなが相続のことで争うことなく、これからも仲良く過ごしてほしいという思いから作成しました。
財産の分け方については、私なりに家族それぞれのことを考えて決めたものです。どうか私の気持ちを理解し、これからも家族で支え合って暮らしていってください。
令和○年○月○日
住所 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
遺言者 ○○ ○○ 印
民法968条には自筆証書遺言の要件として「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない 」と定められています。
これは自筆証書遺言を作成する上で、最低限守らないといけないルールです。
そのため、次の4点は必ず押さえて書くようにしましょう。
全文を自筆で書く
タイトルの「遺言書」含め、基本的に全文を遺言者が自筆する必要があります。
パソコンの使用や代筆は認められていません。
ただし、財産目録の部分だけは、パソコン作成や通帳・登記事項証明書のコピー添付が可能です。
なお、法務省では現在、自筆証書遺言のデジタル化や押印の必要性について議論されています。
今後、本文についてもパソコン等で作成できるようになる可能性はありますが、現段階では自書することが必要です。
署名・押印する
遺言書には必ず遺言者の署名押印が必要です。財産目録や書面(通帳のコピーや登記事項証明書など)を添付する際にも、1枚ごとに署名押印をしなければなりません。その際にも署名は必ず自筆で行いましょう。
また、押印の陰影が不明瞭な場合や消えている場合には遺言書が無効になってしまう可能性があります。
使用する印鑑は認印でもかまいませんが、実印の方が信用性が高く、実際に使用されているケースが多いです。
作成した日付を明記する
遺言書を作成した年月日を入れましょう。日付は正確に書く必要があり、「○月吉日」などの記載だと無効になります。
また、年の書き忘れをした場合も無効になってしまうので、日付は正確にかつ忘れずに書くようにしましょう。
なお、複数の遺言書がある場合は新しい日付のものが有効となります。
訂正部分は二重線で消し、押印する
間違えてしまったとき、内容を修正したいときの「加除訂正」には法律の定めるルールがあります(民法968条)。
まず、間違った部分を二重線で消し、正しい文言を近くに書き入れます。
その上で、余白部分に「4字削除、6字加入」などと変更した旨を記載して署名し、変更した箇所に押印します。
令和○年○月○日
住所 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
遺言者 ○○ ○○ 印
なお、修正テープを使ったり黒く塗りつぶしたりしてはいけません。
守らないと訂正した部分が無効となり、訂正前の遺言の効力が維持されます。署名押印が抜けると訂正が無効になるどころか、訂正箇所によっては遺言書全体が無効になる可能性があります。
そのため、訂正箇所が多い場合は、新しく遺言書を作り直すことも検討しましょう。
自筆証書遺言の書き方のポイント
守るべき要件に加えて、記載すべき事項は多数あります。
下記のポイントを押さえて記載するようにしましょう。
誰に、何を相続させるのか明示する
誰にどの遺産を相続させるのか、わかりやすくかつ明確に書きましょう。
相続内容があいまいになっていると、せっかく遺言書を残してもトラブルのもとになってしまう可能性があります。
たとえば「金融資産2千万円を兄弟で半分ずつ相続させ、残りの財産はすべて妻に相続させる」という内容の遺言を書いたとしましょう。
このような書き方をすると、たとえば現金と株の金融資産があるとき、2千万円の分け方が無数に生じるのでトラブルのもとになってしまいます。
遺言書を書くときには、長男には「○○銀行○○支店 定期預金 口座番号○○○○」、次男には「A株式会社の株式 数量○○株」などのように「どの遺産をどれだけ相続させるのか」を明確にしておきましょう。
遺言執行者を指定する
遺言書で遺言執行者を指定しておくと、遺言内容をスムーズに実現できます。
遺言執行者とは、遺言者が亡くなったときに、遺言の内容を実現するために手続きを行う人です。
信頼できる相続人や行政書士などの専門家を指定しておくと安心です。
付言を付け加える
付言とは、遺言書に記載する家族へのメッセージや遺言を作成した理由などを指します。
原則として法的な効力を持ちませんが、遺言者の想いを相続人に伝えることができます。
付言を記載することで、「なぜこのような遺産の分け方にしたのか」という理由や家族への感謝などを伝えられます。
遺言者の考えを相続人に理解してもらうことで、相続人同士の納得感を高め、トラブルの予防につながることもあります。
個人的には、付言を付け加えることをおすすめします。
自筆証書遺言で失敗しないための注意点
以下では、自筆証書遺言の作成にあたり、失敗しないための注意点を解説していきます。
曖昧な書き方はしない
曖昧な表現は、解釈を巡って相続人間でトラブルになる恐れがあります。
残された家族のために作成したのに、遺言書が原因でトラブルになっては元も子もありません。
財産を受け継がせたい相手には「取得させる」「相続させる」「遺贈する」などの断定的な文言を使いましょう。
基本的には、相続人(配偶者や子どもなど)に財産を渡したい場合は「相続させる」、相続人以外(孫や内縁の配偶者など)に財産を渡したい場合は「遺贈する」という文言を使います。
一方で、「任せる」や「託す」、「渡す」や「譲る」などの表現は避けるのが無難です。
動画や音声の録音はNG
遺言書は書面によって作成しなければなりません。
動画や音声の録音では遺言を残したことにならないので、十分に注意してください。
とはいえ、遺言者の気持ちを伝える目的としては動画や録音なども有効な手段となりえます。
別途遺言書を作成する必要はありますが、相続トラブルを防止するために一定の意義はあるといえるでしょう。
複数人の共同遺言は無効
遺言書は一人一人が自分の分を作成しなければなりません。共同での遺言は認められていないので注意しましょう(共同遺言の禁止 民法975条)。
たとえば、夫婦が共同して「私たち夫婦は以下のように遺言します」などとする遺言書は無効になります。
遺留分・遺留分侵害に配慮し、相続人間の争いを防ぐ
相続人には主張すれば最低限はもらえる「遺留分」と呼ばれる権利があります。従って、遺留分を侵害された相続人は「遺留分に相当する金額をください」と主張することができます。
「全財産を長男へ相続させる」といった、他の相続人の遺留分を侵害する遺言書はトラブルにつながるので、注意が必要です。
作成した遺言書の保管方法|見つけた場合はどうしたらいい?
作成した遺言書をどこに保存するかは非常に重要です。
以下では遺言書の保管方法を解説していきますが、大前提として、相続人となるべき人には遺言書の保管場所を伝えておくようにしましょう。
自宅で保管する
自筆証書遺言を自宅で保管する場合は、紛失や破損を防ぎつつ、相続人が遺言書の存在に気づける場所を選ぶことが大切です。
保管場所としては、鍵付きの引き出しや金庫、重要書類をまとめているファイル・保管ケースなどが考えられます。
ただし、改ざん・隠匿・破棄のリスクを伴う他、後述する「検認」という手続きが必要になるため、自宅での保管はあまりおすすめできません。
銀行の貸金庫で保管する
自筆証書遺言は、銀行などの金融機関の貸金庫に保管することもできます。
貸金庫は、自宅で保管する場合と比べて、紛失や盗難、火災などによって遺言書を失うリスクを抑えられる点がメリットです。
一方で、遺言者が亡くなった後、相続人がすぐに貸金庫を開けられるとは限らないため注意が必要です。
金融機関が遺言者の死亡を把握すると、貸金庫を開けるために相続人の確認や必要書類の提出など、所定の相続手続が必要になることがあります。
そのため、「相続手続きを進めるために遺言書を確認したいのに、その遺言書が貸金庫の中にあって確認できない」という状況になる可能性もあります。
また、貸金庫に遺言書を保管していることを家族が知らなければ、遺言書そのものが発見されないおそれもあります。貸金庫を利用する場合には、遺言書を貸金庫に保管していることを家族に伝えておくようにしましょう。
法務局の自筆証書遺言保管制度を活用する
法務局の自筆証書遺言保管制度を活用し、遺言書を保管することができます。
保管できる場所は、遺言者の住所地または本籍地、もしくは遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所(特定の法務局)です。
申請当日は、自筆証書遺言のほかに申請書や住民票などの必要書類を持参し、遺言書保管所の窓口で申請手続きをします。
手数料が1通につき3900円かかりますが、最も安全な保管方法といえるため、是非活用するようにしましょう。
遺言書を見つけた場合、勝手に開封せず裁判所で検認を受ける
自筆証書遺言を発見した場合、相続人たちは原則として家庭裁判所で「検認」を受けなければなりません。
検認とは、裁判所で遺言書の内容や状態を確認して、偽造・変造を防ぐための手続きです。
検認をしなかったからといって遺言書が無効になるわけではありませんが、検認を終えなければ遺言書によって不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなどを受けられません。
そのため、遺言書を見つけた場合にはまず、検認の手続きを受けるようにしましょう。
なお、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合には検認が不要となります。
遺言書は自分で作成できる?専門家に依頼すべきケース
遺言書は自分で作成できますが、家族構成や財産内容が複雑な場合には、専門家へ相談することで無効や相続トラブルのリスクを下げられます。
ネット上にあるテンプレートの流用では対応できないことも多いため、書き方や内容に不安を覚えている方は、専門家への相談を検討してみましょう。
また、まず始めは無料相談ができる事務所に相談するとよいでしょう。
まとめ
自筆証書遺言は自分で気軽に作成できるメリットがある一方、要件を満たしていなければ無効になるおそれがあります。また、内容によっては相続トラブルにつながるリスクもあります。
- 自分で作成するのが不安
- 残された家族のために、有効な遺言書を書きたい
上記のような方は、専門家への依頼をおすすめします。
且井行政書士事務所では、遺言書作成に関するご相談を無料で承っております。
「まずは話だけでも聞いてみたい」という段階でも、お気軽にご相談ください。